北海道150年の歴史を学び、未来へつなぐ2days ーフードツーリズムのススメ<後編>ー


北海道150年の歴史を学び、未来へつなぐ2days

ーフードツーリズムのススメ<後編>ー

Peace Kitchen HOKKAIDOが主催する『北海道地震復興支援〜千歳をめぐる水と大地・命を感じるプログラム〜アイヌ料理とその精神・北海道150年の食文化と、北海道イタリアンを学ぶ道央千歳1泊2日』。後編は、千歳市の清らかな水とビールの関わり、北海道とイタリアの食文化の融合、アイヌの食文化に欠かせない鮭について学んだツアー2日目の様子をご紹介します。

 

食材と技術が融合して生まれる“新しい食文化”

 ツアー2日目は、キリンビール北海道千歳工場からスタート。今回は工場見学だけでなく、ビールに合う料理を自分たちで調理して食べるプログラムが企画されました。

 

 

 同工場の敷地は札幌ドーム4.5個分。ここで年間8万L350mLの缶ビールに換算すると約2億本分を製造しています。

 

▲ホップと麦芽

 ビールにも様々な種類や特徴がありますが、同社を代表するビールといえば「キリン一番搾り」。一般的なビールは一番搾り麦汁と二番搾り麦汁で仕込むところ、キリン一番搾りは一番麦汁だけを使用するため、麦の美味しさが丁寧に引き出され、上質な味わいになるのがポイントです。

 早速、一番搾りと二番搾り麦汁を試飲。二番搾りにもふんわりと麦の甘みが残っていますが、一番搾り麦汁は麦そのものの甘みが凝縮されているのが分かります。この麦の持つ甘みを生かすことで、雑味や渋みのない美味しいビールができるのだとか。さらに麦汁にホップを入れて煮込むと、ビールらしい苦味や香りが生まれます。

 もう一つ、ビールづくりで重要なポイントが“水”。日本酒や焼酎、ウイスキーなどの醸造が水の綺麗な(水質のよい)地域で行われているように、ビールもまた水質が美味しさに深く関わっています。同工場では、支笏湖を源流とするナイベツ川湧水(日本の名水100選)を使って醸造。最高の原材料を贅沢に使って仕込んだビールは、発酵・貯蔵して約2カ月後、店頭に並びます。

 

 

 工場見学の後には、お待ちかねの昼食タイム。フードツーリズムにふさわしく、学んだばかりのビールと北海道産の食材をふんだんに使った料理を楽しみます。まずは、キリン一番搾りで乾杯!!やっぱり生ビールは最高です!

 

▲好きな具材を好きなだけ詰めて作るパニーニ

 ビールに合う料理としてチョイスされたのが、イタリアで親しまれているパニーニ。道産小麦とビールのホップを酵母を使用して焼き上げたパンに、平飼いの卵(千歳産)や北海地鶏の鶏ハム(十勝清水町産)、三元豚(厚真町産)、道産のチーズをたっぷり挟み込みます。パンには、ヒメマスのオイルサーディンのオイルがサッと塗ってあるこだわりぶりです。

 

▲道産野菜とチーズをふんだんに使ったタッカルビも登場

  北海道の数あるチーズ工房の中から選ばれたのは、札幌市に工房を構える「ファットリアビオ北海道」のカチョカバロ。イタリア出身のチーズ職人が北海道の良質なミルクで作ったチーズは、そのまま食べてもコクがあって美味しいのですが、熱を加えるとトロリと溶けて絶妙な味わいに。

 

▲ファットリアビオ代表の高橋さん

  「北海道は良質な牛乳の生産地。原料の良さとイタリアの伝統技術を組み合わせることで、世界に誇る食品ができるのではないかと思い、チーズづくりを始めました」とファットリアビオ代表の高橋さんは工房設立の経緯を語ります。

 その言葉を裏付けるように、2014年に開催された「ジャパンチーズアワード2014」では、カチョカバロをはじめ同工房のチーズが数々の賞を受賞。北海道の特有の気候風土から生み出される素材はそのままでも十分価値がありますが、そこに異なる食文化や技術が混じり合うことで、さらに付加価値の高い食が生まれることを実証しています。

 食文化が融合して生まれる新たな可能性を、参加者と共に作るパニーニに感じながら、最高の一杯を楽しむ。なんとも贅沢なひと時です。

 

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キリンビール(株)北海道千歳工場

北海道千歳市上長都949-1

【お問い合わせ】工場見学:0123-24-5606   レストラン:0123230101

【受付時間】 工場見学:9時〜17時 レストラン:1030分〜21

【休館日】月曜日休館(祝日の場合は営業、次の平日が休館)年末年始休館

※レストランの休業日は第4月曜日のみ

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“神の魚”の一生に触れる

 

 ツアーの最後を飾るのは、千歳水族館。淡水魚を中心に約100種類、1万匹の魚や千歳市周辺に生息する生き物を見ることができる水族館です。「サーモンゾーン」「支笏湖ゾーン」「世界の淡水魚ゾーン」「水中観察ゾーン」など、工夫を凝らした展示が光ります。ここでは、アイヌの人たちが「神の魚」と呼んで大切にしてきた鮭の生態や千歳川の環境について学びました。

 

 

 サーモンゾーンでは、鮭の仲間が稚魚から幼魚、成魚へと成長する姿を観察。鮭にも様々な種類がありますが、ここではギンザケ、シロザケ、マスノスケ、サクラマスなどが飼育されています。

 

 

 目を引くシャンパンタワーには、イクラ(鮭の卵)が!!卵から孵る鮭の稚魚の姿も間近で見られます。

 

▲水槽のバックに映る景色は、実際の支笏湖に潜って撮影された湖の映像

 

 支笏湖ゾーンにある湖の様子を再現した水槽には、1日目に美味しくいただいたヒメマスの姿もありました。

 

▲本物の川の中を観察できる

 

 鮭について学べる水族館は道内にいくつかありますが、千歳水族館の最大の特徴は本物の川の中を1年中見られること。水族館の一部が千歳川の左岸に埋め込まれる形で建てられており、なんと窓の外から川底が見えます。鮭が遡上や産卵、孵化、稚魚になって海に旅立っていく様子など、四季折々の川の世界が目の前に広がります。

 

 

 

 アイヌの人たちは、遡上して体力を使い切った脂の無くなった鮭も上手に活用していました。それが、ビールや日本酒にぴったりのおつまみ、北海道民にはお馴染みの“鮭トバ”です。

 館長の○○さんのお話によると、現代では海で獲れる脂の乗った鮭を使用しているため賞味期限が短い商品が多いようですが、アイヌの人たちが作るトバは20年以上も保存できたそう。脂が乗っていないことが乾燥や保存のしやすさに繋がるという知恵と経験に加え、そこには「生き物(神様)の最期をありがたくいただく」というアイヌの人々の精神、そして“在り方”を垣間見ました。

 

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サケのふるさと千歳水族館

北海道千歳市花園2丁目312

【お問い合わせ】0123-42-3001

【営業期間】

○通常営業/201912日~1114日 201921日~1228

○休業日/年末年始休館: 20181229日~201911

   メンテナンス休館:2019115日~31

【営業時間】9:0017:00

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▲サケを捕獲に使う捕魚車(別名:インディアン水車)の前で

  美味しい食べ物や美しい景色を堪能するだけでなく、作り手の想いや土地の文化・歴史にまで触れるPeace Kitchen HOKKAIDO のフードツーリズム。私たちの暮らしに一番身近な“食”を切り口に、記録だけでなく、記憶に残る旅を提供してくれました。

次はどんな北海道の食の姿を見せてくれるのかー。

今からとても楽しみです。

 


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